古代より多くの女性に愛され続けてきたバラ。「花の女王」と呼ばれるだけあり、バラの花にはなぜか見る人を虜にするような魅力があります。一面に咲き誇る様子は豪華絢爛で、この世のものとは思えないほどの美しさ。そんなバラをあなたの庭で咲かせてみませんか?
バラとは?
バラはバラ科バラ属の樹木。実は、日本の春を彩る桜や梅、桃の花も全てバラ属で仲間になります。
バラは南半球には自生しておらず、北半球にのみ分布しています。赤道近くから寒帯にいたるまで、世界の多くの場所で自生していますよ。日本にも自生しています。野生種は150~200種類ほどあると言われています。
バラの分類
世界には様々なバラがあるためバラの分類の方法は様々ですが、大きく分類すると3つに分けられます。
まず1つ目が野生種(ワイルド・ローズ)。これは手を加えていない自生しているバラのこと。主に中国やヒマラヤなどのアジアの野生種を元に改良して、現在のバラは作られています。野生種の中でも祖先を辿っていくと、日本原産のノイバラやテリハノイバラ、中国原産のコウシンバラなど7、8種に辿り着くそうですよ。ヨーロッパのイメージが強いバラだけど、元々はアジアの花だったのかもしれませんね。
2つ目がオールド・ローズ。1867年に最初のモダン・ローズである「ラ・フランス」が出る以前のものをオールド・ローズと呼んでいます。名前の通り、古くからある野生種をクラシカルに品種改良したもの。美しいだけではなく、良い香りのものが多いのが特徴。ほとんどが春だけの一季咲き。
3つ目がモダン・ローズ。オールドローズとは逆に、世界最初のハイブリッドティーローズである「ラ・フランス」誕生以降のバラのことを言います。四季咲き、高芯咲きなどを取り入れており、現在のバラに多大な影響を与えました。
バラの歴史
バラは古代より数々の神話や伝説にも登場しているほど、とても古くから私たち人間と関わりがありました。はっきりとはしていませんが、紀元前5000年頃には既に古代メソポタミア文明の「ギルガメシュ叙事詩」でバラについて書かれているんだとか。
紀元前1200年頃の古代ペルシャではバラの栽培も始まっていたそうです。かの有名なクレオパトラがバラを愛していた話は有名ですね。それほどバラの歴史は古いのです。
その後、西アジアからヨーロッパにバラが伝わり、18~19世紀にかけて競うように品種改良が行われます。そして1867年には今までの常識を覆し、初めてのモダン・ローズをフランスで誕生させます。これが転機となりこれ以降のバラの性質に大きな影響を与えました。
バラの品種の数
バラはいつの時代も人気のため、世界各国で品種改良がされ現在でも増え続けています。正確な数字は分かっていないですが、一説には4万種類を越えているとも言われているんですよ。この品種の多さはバラが人々に愛されてきた証拠ではないでしょうか。
色々な環境に適応してたくさんの方が育てられるようにと、新しい品種が毎年誕生し続けています。
バラの樹形
バラは枝の伸び方によって、大きく分けると3つに分類することができます。この樹形を知ることで、育てる場所が変わってきます。
1.ブッシュ(木立ち性、木バラ)
低木と同じように自立し、枝が垂れることなく直立しているタイプのバラをブッシュと呼びます。樹高は品種によって異なり、50cmほどのミニチュアローズ系から2mになる大きなものまであります。誘引せず剪定して育てるので、コンテナ栽培にも向いていますよ。直立性、半直立性、横張り性に分かれます。
2.シュラブ(半つる性)
ブッシュとつるとの中間タイプと言われるものをシュラブと呼びます。枝先がしなやかである程度樹形をコントロールできるため、剪定してブッシュのように、誘引してつるのようにと、仕立て方でどちらにも変わり利用しやすいのが特徴。ほとんどのオールドローズや野生種がこの樹形です。
3.つる
枝がつる状に伸び、アーチやパーゴラに誘引して楽しむタイプの樹形。つると言ってもアサガオのように自ら巻きつくことはなく、人間が誘引してあげなければなりません。枝先が垂れるクライマーと枝が横に伸びるランブラーの2種類あります。茎の堅さや太さは品種によって様々です。
バラの花形
日本ではよくバラの絵に描くように、先が尖った「剣弁高芯咲き」と言う種類が一般的でした。これはモダン・ローズの代表的な形です。しかし実はバラの花の形のバリエーションはとても豊富で多種多様なものがあります。
例えばいくつもの花びらが重なって咲くボリューム感のある「ロゼット咲き」、外の花びらが中の花びらを包むように咲きまるでティーカップのような形になる「カップ咲き」、小さな花びらが多数開き、下向きに反り返るのが「ポンポン咲き」、横から見た時に開き切ると平らに咲くのが「平咲き」、規則正しく花の中心から4つに分かれてそれぞれが渦を巻くような咲き方が「クォーター咲き」、などがあります。
バラのトゲについて
「美しいバラには棘がある」と例えられるだけあって、バラの大きな特徴の一つであるトゲ。種類によってトゲの形も様々で、鋭いものから扁平なものまであります。なぜトゲがあるかと言うと、外敵から身を守るためや他のものにひっかけるためなどと言われていますが、はっきりとした理由は分かっていないそうです。
また、全てのバラにトゲがあるわけではなく、全くトゲをもたないものやトゲが少ないものも中にはあります。
一季咲きと四季咲き
バラには一季咲きと四季咲きのものがあります。
一季咲きと言うのは年に1回、春の季節にだけ一斉に花を咲かせることを言います。野生種やオールドローズの多くはこの一季咲きです。
対して四季咲きは、気温などの条件さえあれば一年中花を咲かせることを言います。しかし日本の夏や冬は暑すぎたり寒すぎたりでバラには温度が合わないため、主に春と秋の二度花を咲かせますよ。
バラの色
もともと白、赤、黄色に限られていたバラを改良し、現在はカラーバリエーション豊富な花へと進化しました。ピンク、紫、橙など、庭を色とりどりに鮮やかに飾ってくれるのがバラの魅力。花びらの縁や中に違う色が混ざったり、2色が混ざったりするものもあり、色の濃淡だけではなくパターンも豊富ですよ。
また、バラは青い遺伝子を持っていないので青いバラを作るのは不可能と言われてきました。しかし長年の研究により2002年、日本の研究者たちによって世界で初めての青いバラを誕生させたのです。テクノロジーが進んだ現代、作れない色はないのかもしれませんね。
バラの香り
クレオパトラがバラの香りで男性を誘惑したと言う話もあるほどに、バラはとても良い香りで人気があります。昔から薬としても使われており、ローズの香りはリラックス効果やストレスを癒す役割があると言われています。バラが優雅な気分にさせてくれるのは、見た目はもちろん、香りもその役割を果たしているからかもしれません。
香水にはよく使われますが、一言で言ってもいろいろな香りがあります。濃厚で甘い香りの「ダマスク」、紅茶のようで上品な「ティー」、リンゴや桃のようなフルーツの香り「フルーティー」など、香りも様々でこれもまたバラの魅力の一つと言えます。
まとめ
世界中の人々を魅惑し続けるバラの花。もともとは少ない野生種だったとは思えないほど、今では種類もバリエーションも豊富で、バラの世界はまさに日進月歩。
一年に一度だけの開花のために日々お世話をしなければならないけれど、咲いた時の美しさは別格で、まるで自分へのご褒美のような贅沢な気分になります。バラいっぱいの庭は良い香りに溢れ、一日中ずっといたくなるほど居心地が良く幸せな気分にしてくれます。
さぁ、あなたも次の春に向けて、バラを育ててみましょう!