寒い冬はバラにとって花を咲かせられない時期ですが、実はいろんな手入れをしなければならない大切な時期なのです。春に一斉に花を咲かせるための、一年で一番大切な時期かもしれません。大きな鉢植えに替える鉢増し作業もその一つ。鉢植えについての知識や手順をまとめました。
鉢増しとは?
今までの鉢よりも、一回り大きな鉢に植え替えることを鉢増しと言います。バラだけでなく、どんな植物でも生育に沿った大きさの鉢に替えてあげないといけませんね。
ちなみに、バラは1~2年に1回、休眠期に古くなった土を新しい土に変えてリフレッシュしなければなりませんが、そちらは鉢増しではなく植え替え作業と言います。
鉢増しする目的
なぜ鉢増しをしなければならないのか? ――ズバリ、そのままの鉢では根が詰まってそれ以上成長できないからです。
地植えの場合、どこまでも根を伸ばして成長を続けることができますが、鉢植えだと根が広がるスペースが限られているため、それ以上根を伸ばすことができず窮屈になってしまいます。
そうすると根が詰まって大きく育つとこができません。根がぎゅうぎゅうになってストレスを感じると、最悪枯れてしまうこともあります。
一気に鉢を大きくしてはいけない理由
じゃあ最初から大きな鉢で育てれば鉢増しする必要ないじゃない! ――そう思うのは当然です。その方が手間が省ける気がしますし。
しかし、鉢増しは徐々に大きな鉢に変えていくのが鉄則で、一気に大きな鉢に植え替えてはいけません。(上手く育てられる方もいますが、上級者向きです。)
バラに対して大き過ぎる鉢にすると、根がそれほど成長していないため土に溜まった水分を吸い上げる量が少なく、鉢の中に水分が多く残ってしまい加湿気味になってしまいます。
水分が多いと酸欠状態になり、結果、水で根が腐ってしまう根腐れになりやすいのです。
植物によっては加湿を好むものもあり、そういったものは一気に鉢増ししても枯れにくいですが、バラの場合は一回りずつ大きくするのが一般的ですよ。
鉢増しする時期
では、鉢増しする時期はいつが良いのでしょうか。これは、実はいろんな意見があります。
私の場合は、1~2月頃の休眠期に入る時期に、剪定や誘引と一緒に行うことが多いです。休眠期であれば、多少荒っぽいことをしても大丈夫で、根を整えたり土を落としたりすることができるからです。
ただし、新苗を買った場合は、あまりに土が悪かったり鉢が小さいと感じた時だけ、花が終わった6月中旬頃に植え替えることもあります。(その場合は休眠期に入っていないので絶対に根を崩してはいけません。)
鉢増しすることで水もちが良くなるため、暑くて水切れしやすい夏も元気に越すことができます。
ですが、私の知り合いのバラ農家さんの意見では、休眠期に入るまでは触らない方がいい、と言う人もいます。なので私は、できるだけ休眠期まで待ってから鉢増ししていますよ。
鉢増しするタイミング
鉢を大きくした方がいいなと言うタイミングは、前述したように小さな鉢で買った新苗の場合、すぐに根が詰まってしまうので、その年の花後か休眠期には鉢増しした方が良いです。
あとは、下から根が出ていて詰まっているような状況が分かれば、鉢増しのタイミングですね。
また、根詰まりを起こしていなくても大きく成長させたいのであれば、毎年少しずつ大きな鉢に植え替えていくのも良いでしょう。
どこまで鉢増しするのか
鉢を大きくすればするほど、それに伴いバラも大きく成長します。ですが、鉢を置くにもスペースの限界がありますね。
最大でも10号ほどが目安と言われており、それ以上は鉢増しをする必要はないそうです。永遠に大きくしていく必要はありません。
けれど、鉢増しはしなくても土を替える植え替えの作業は必ず必要なので、鉢増しをしなくなっても1~2年に1回は植え替え作業を行ってくださいね。
鉢増しの手順
ここからは、鉢増しのやり方についてご説明します。
1. はさみで根を切り取る
こちらのザ マッカートニーローズをご覧下さい。鉢底から根が出ていると思ってひっくり返すと、ぎっしりと根が張っていました。鉢増しするにはちょっと厄介ですけど、すくすくと成長している証拠です。
このままでは絶対に株を抜くことができないので、鉢底に張った根をはさみで全て切り取ります。
2. 鉢から株を抜く
鉢から土ごと株を抜きます。簡単に抜ければ良いのですが、根が詰まっているとなかなか抜けなかったりします。
そこで、鉢を横にしてトントンと叩いたりすると、抜けやすくなります。
なかなか抜けない場合は、棒で縁を突いて隙間を作ってあげたりしても、隙間ができて抜けることがあります。
3. 根をほぐす&カット(休眠期のみ)
取り出したらやはり根がぎっしりですね。
鉢底石を取り出したいのと、根が詰まり過ぎているので、手で軽くほぐして下の方の根をカットして短くしました。
休眠期は基本的に根を触っても大丈夫。あまりに伸びすぎた根はカットして、次の鉢に入る大きさにします。上の方の古土も落とし、全体的に軽くして整えておきました。
以前、休眠期に根の土を全て洗い落として根もだいぶ切ったことがありますが、それでも花をいっぱい咲かせ、元気に成長を続けていますよ。
休眠期以外は絶対に根を触らず、そのままの状態で次の鉢へ植え替えてください。
4. 土を用意する
基本用土と補助用土をブレンドして、バラに適した土を作ります。手間な人はバラ専用の培養土を使っても良いです。
私の配合は以下の割合。
- 赤玉土(中粒):3
- 鹿沼土(赤玉土小粒):3
- 腐葉土:2
- 堆肥:1
- パーライト:0.5
- くん炭:0.5
以前詳しくご紹介いたしましたので、興味のある方はそちらをご覧下さい。
5. 鉢底石を敷く
水はけを良くするためや土を流れ出にくくするために、鉢底石を敷き詰めます。
そのまま入れると、次に鉢増しや植え替えする時に1つ1つ探し出さなければならなくなるので、その手間を省くために私は鉢底石ネットに入れてまとめるようにしています。これが便利。
6. 土を入れる
鉢底石の上に、先ほど作ったオリジナル用土を3cmほど被せます。
6. 株を乗せる
土を入れたら株を上に乗せ、高さや向きをチェック。鉢の上部5cmほどはウォータースペース(水やりの時に一時的に水が貯まる場所)になるので、そこには被らないような高さで株を置きます。
また、株が傾いたり偏ったりしないよう、真ん中に水平に置くようにしましょう。
7. 土を流し込む
株と鉢の隙間に土を流し込みます。
8. 鉢をトントンと落とす
土を軽く入れた状態だとしっかりと詰まっていないので、トントンと落としたりゆすったりして、隙間までしっかりと土が入るようにします。そうすることでかさが減るので、再び土を入れて付け足します。
9. たっぷりと水やりを
鉢増しは以上で完了。植え替えた直後は鉢底から流れ出るほどしっかりと水やりをします。水やりすることで根の働きが活発になり、根張りを促し成長しやすくなりますよ。
あとは日光を好むので、日当たりの良い場所で管理してくださいね。
バラの魅力に取り憑かれ……
バラは枯れやすく難しい植物だと思われがちですが、毎日目を通してそれぞれのバラに合ったお手入れをすれば、思っているよりずっとタフな植物だと思います。
確かに1年間を通して手間がかかり、特に冬の剪定や誘引は極寒期での作業になるけれど、手間をかけた分、咲いた時の喜びは一入です。
バラの花園を目指し、今年も庭づくりに奮闘していこうと思います。目指せ!地上の楽園!